虫頭

Friday, January 31, 2014

フユセンチコガネ:論文「冬に活動する内温性の甲虫:フユセンチコガネに関する温度調節、エネルギー代謝、交尾探索について」(KENNETH R. MORGAN)


タイトル:冬に活動する内温性の甲虫:フユセンチコガネに関する温度調節、エネルギー代謝、交尾探索について。
筆者:KENNETH R. MORGAN(生物学科、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校)
日付:1986年10月10日

要旨:

  • 北米西海岸のフユセンチコガネ(コガネムシ科フユセンチコガネ属)雄の冬期夜間における激しい交尾探索行動について。
  • 飛翔中の体温は摂氏35度以上に上昇するが、胸部の体毛に保温効果が認められない。
  • 雄は交尾探索中に地面を歩き回っている際にも胸部の温度を高温に保つことができる。いっぽう雌には飛翔能力も内温性も無い。
  • 研究室の呼吸測定器において(室内は摂氏9度)は、歩き回る状態で4時間20分のあいだ体温を高温に保っていたことが確認された。
  • 変動しながらなも内温性が持続している状態におけるエネルギー代謝と体温について。
  • 体温の上昇にあわせて歩行スピードが急速に上昇していく現象について。
  • 雄が交尾機会を求めて雌にいっせいに群がるように競争する状態について。
  • 交尾の達成と天敵の回避は、雄の飛翔能力とすばやく歩き回れる機能によるところが大きい、つまりは体温を高温に維持することができるに他ならない。
原文URL
http://jeb.biologists.org/content/128/1/107.full.pdf
参考URL
http://sakura1.higo.ed.jp/edu-c/kagakuten/h24kagakuten/pdf/hs1.pdf
http://www.flir.com/flirone/explore/

▼とうとう今シーズンはまとまった雨がなく生きたフユセンチコガネを見ることが出来なかったけれど、次のシーズン迄には赤外線熱画像装置を入手すること。




Monday, January 06, 2014

サイカブト属(Xyloryctes jamaicensis)



Family科:Scarabaeidaeコガネムシ (Scarab Beetles)
Subfamily亜科:Dynastinaeカブトムシ (Rhinoceros Beetles)
Genus属:Xyloryctesサイカブト (Rhinoceros Beetles)
Species種:jamaicensis (Xyloryctes jamaicensis)


  • 上記写真のサイカブトは約5ヶ月生きた。残り雌2匹。1月に入ってもケース内を良く歩き回っている。
  • パイナップルなら食べている形跡あるが、リンゴは食べていない。昆虫愛好家のPatrick Coinさんによれば、成虫はAsh Treeの葉を食べるとある。←今年のシーズンには現地にて食べるところを確認すること。
  • Frederik Nijhout博士(ノースカロライナ州デューク大学)によれば、幼虫はAsh Treeの根を好むものの農産物などの害虫ではない。アオダモの木(Japanese Ash Tree)といえば、日本では野球のバットの材料として使用されている。
  • 日本ではフィリピン産サイカブト等各種の飼育成功例があるので、これにならって今年は産卵飼育を試してみること。交尾をしているところをほとんど見たことがないので、採集個体は例年以上に多めに。←現地Ash Tree下の環境を整えることも検討。
  • 本種とXyloryctes thestalusとの違いについても要確認。
  • 犀兜虫。


参考URL:
http://bugguide.net/node/view/3310
http://bugguide.net/node/view/345795
http://www.asahi-net.or.jp/~wp5k-tnd/america.htm
http://ja.wikipedia.org/wiki/サイカブト
http://www.kayakuya.com/catalog/product_info.php/products_id/817
http://kochugakkai.sakura.ne.jp/archive/elytra/pubcom/pubcom24.html
http://biology.duke.edu/dukeinsects/Xyloryctes_jamaicensis.php
http://ja.wikipedia.org/wiki/アオダモ
http://bugoftheweek.com/blog/2013/1/7/american-rhinoceros-beetles-xyloryctes-jamaicensis
http://eol.org/pages/145109/details
http://mlbs.org/organism/xyloryctes_jamaicensis
http://works.bepress.com/brett_ratcliffe/1/
http://entomology.unl.edu/faculty/ratcliffe.shtml
http://digitalcommons.unl.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1093&context=entomologypapers
http://www.tsukiyono.co.jp/stag2/category/カブトムシ種別/サイカブト/
http://www.jade.dti.ne.jp/~zardoz/bugs/1003.html

動画:
http://www.youtube.com/watch?v=0PvKmJnIQrg

Wednesday, January 01, 2014

フユセンチコガネ(Pleocoma australis):Evans博士の「Introduction to California Beetles」より



  • 昨年のMHで灯火採集した前回とは別のフユセンチコガネの映像。大きな触角が良く見える。全身が黒いが、体毛は灰色っぽい。

Evans博士の「Introduction to California Beetles」によれば:

  • Pleocoma australis・雄の体長は24〜28mm。
  • 生息が確認されている場所は、SBからSD迄の海岸沿いの山間地帯(Transverse Range) 、さらにはメキシコのバハカリフォルニア迄の山間地帯(Peninsular Range) 。海抜で言うと500 ft〜11,500 ft (150 m to 3,500 m)迄。
  • 発生時期は10月や11月の最初の秋の雨。特に、日没の頃あるいは日没後の霧雨。
  • 幼虫はカシの木・Canyon Live Oak (Quercus chrysolepis)の根を食べる。→ドングリがなる木。常緑。コナラ属。
  • フユセンチコガネ科は一属。
  • 生息はワシントン州南部からメキシコ・バハカリフォルニア北部迄。かつてアラスカ州とユタ州にもいると言われていたことがあったのは誤り。
  • サクラメント・バレーやサンディエゴの海岸沿いの平地には、孤立したかたちで数的に多くない固有の種が確認されている。おそらく雌が飛べないことと、その地域が過去200〜300万年の間に氷河周辺地域におこる地層変化や水没の影響を受けなかったことと関係がある。→TPのことだろうか。要確認。
  • フユセンチコガネは大きくて、がっしりしていて、光沢あり。
  • 腹側を覆う毛深い体毛が意外なことに保温機能を果たしていない。冷たい雨の中を飛び回ったり、冷えきっているであろう地面を雌を探して歩き回ったりする際においても体毛が何らかの保温効果を果たしていることはない。
  • 雄は体温を華氏95度にまで調節出来ることが知られているが、そのメカニズムについては解明されていない。
  • 毛深い体毛は地中深くから地表へ掘り進む際の摩耗から体を保護する効果があるのではないか。
  • 雄雌ともに熊手のような脚とV字型の角がありこれで地中を掘り進む。
  • 雄には飛翔能力があるが雌にはない。そのため雌の後翅は縮んで退化した組織になってしまっている。雌の体は通常雄よりもかなり大きくて重たい。
  • 成虫の口器は機能しておらず、食べることが出来ない。エネルギー源は体内に蓄えられている脂肪分のみ。そのため短命で、平均的には2時間飛び回れる程度のエネルギーしかなく、数日で命が尽きる。雌も食べることは出来ないけれども、じっとしているのでエネルギー消費は少なく、秋冬の降雨後も数ヶ月間生きていることがある。フユセンチコガネの多くの種において、雄の活動の引き金となるのは秋冬のかなりの量の降雨あるいは晩冬や早春の雪解けといったタイミング。そのときの状況によるけれども、雄は日の出や日の入りの頃に飛翔する。軽い雨が降っていれば夜にも飛んでいることもある。一部の種では、かなり雨が降った翌日のしかも晴れた日の遅めの朝でも飛んでいることがあるし、かなりの雪解けがあれば同じことが起きる。→降雨はきっかけにすぎないということであれば、降雨の日時を起点に日の入りや日の出を狙うこと。11月の雨の夜明けのMH、今月の雨の遅めの午後のCFでは不発に終わったわけだが、実は少しタイミングをはずしてしまっただけだったのかもしれない。1月の雨に期待。雪解けの山岳地帯については実績調査要。
  • 雄は地表すれすれを雌のフェロモンを手がかりに飛ぶ。相当離れた場所からでも、草木が繁茂しているような状況においても地表の穴に出てきた雌を見つけることが出来る。実際に十数匹の雄が一匹の雌に交尾しようと群がって乗りかかってしまうようなことも見られる。交尾は地面あるいは雌の坑道で行われる。交尾をすませた雄はその場を去り短い命の続く限り別の交尾の機会を探す。飛翔する際には灯火に引き寄せられてしまうし、水面が輝いてしまうプールに引き寄せられて落下してしまうことも。一方、雌は再び坑道を戻り産卵し、数ヶ月後の孵化を待つ。産卵数は40-50個。坑道の突き当たりで螺旋状に卵を産みつける。その深さ、地下3m(10ft)。孵化するのに約2ヶ月。
  • 孵化した幼虫は固くしまった土を強靭な脚と顎を使って、寄生植物となる草、低木あるいは木の根の広がりに合わせて掘りすすむ。オレゴン州ではいくつかの種の幼虫はイチゴ、洋梨、リンゴ及びサクランボの害虫扱い。通常コガネムシの幼虫は3回脱皮するが、フユセンチコガネの場合は13年かけて7回以上脱皮する。蛹室はシンプルで長め。天敵は地下にも地上にもいろいろ。幼虫と蛹にとっては、ムシヒキアブ(Asilidae)の幼虫が、成虫にとっては、コヨーテ、狐、スカンク、狸および梟。敏捷なコヨーテ、狐あるいは鳥は飛翔中の雄を捕まえてしまうこともある。彼らの糞にフユセンチコガネの脚や前翅などが多数紛れているようなことも珍しいことではない。雌の体内に線虫が発生したケースも記録として残されている。
  • カリフォルニア州では1属に20種と3亜種が確認されている。→Dに相談:NHM LAかSBでタイプ標本 type specimenを見せてもらう機会はないか。
  • 特徴:カリフォルニア州のフユセンチコガネは北米においては大型なコガネムシの仲間に分類され、全体として体形はカナブン(June Bug)に似ている。体色は雄が赤茶から黒であるのに対して雌は赤茶のみ。体はがっしりとして、おおむね楕円形。背側が光沢があるのに対して腹側は深い剛毛をまとっている。飛翔能力のある雄は体長16.5mmから29mm位で、飛べない雌は体長19.5mmから44mmとかなり大きいのでその区別は容易につく。雌雄とも角がありその触角は11節からなり、その内の片状部は4節〜8節にもなり折り畳まれるとゴルフ・クラブのようになる。雄の片状部は雌のそれより大きい。食葉性なり食糞性なり口としての機能が欠落しているため何も食べない。前胸(prothorax)は広く、前脚・基節が前胸に接続する部分の窪みが背部に向かって解放されている点は他の甲虫のなかでも特徴的(→拡大写真等で要確認)。小盾板(scutellum)は目で見えるほどはっきりある。鞘翅(elytra)はなめらかで光沢がありはっきりとした溝が見られ、腹部は完全に隠されている。力強い前脚には熊手のような櫛状の歯が見られる。跗節の数(Tarsal formula)は、5(前脚)5(中脚)5(後脚)で、かぎ爪部分は単純な構造でいずれも同じ大きさ。腹部は6つの腹節からなる。幼虫は乳白色で"C"の形状、腹部の先端は排泄物によって黒っぽい場合がある。頭部は光沢のある黄色か赤茶色。触角は3節で眼は無い。脚は4節。10節ある腹部にはいかなる突起形状のものもみられない。
http://www.sbcollections.org/cbp/CBP_simple_query.aspx
http://www.hastingsreserve.org/invertebrates/Insects/Pleocoma/RainBeetle.html
http://sizenkan.exblog.jp/16114528
http://www.bugfacts.net/june-bug.php#.UsDS5uDjBTY
http://www12.plala.or.jp/mtoyoda/syokkaku.html
http://okwave.jp/qa/q5115406.html
http://soudan1.biglobe.ne.jp/qa1596273.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/クワガタムシ
http://ant.edb.miyakyo-u.ac.jp/J/GUIDE/MUNE.HTM
http://ja.wikipedia.org/wiki/鞘翅
http://ja.wikipedia.org/wiki/関節肢
http://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/cmsfiles/contents/0000064/64979/HP037.pdf
http://www.cals.ncsu.edu/course/ent425/library/spotid/coleoptera/families/tenebrion.html
http://biol-zukan-2.nara-edu.ac.jp/Figures/MorphExpl.html